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パンを焼き本を読む日々


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季節的なものかもしれないけれど、ここのところちょっと不安定な日々だった。

年齢的にそういう“症状”と付き合っていかなければならないのは頭では分かっているのだけど、ほぼ半年ぶりくらいに「あぁ、明日朝が来てまた同じような一日が始まるのか...」という、どうしようもなくつらい気持ちになってしまった。

シリアスな鬱状態だと、実際に朝布団から起き上がれなかったり、一日何もできずただただ涙が流れて仕方がないとか、そういう状態になるのだけど。
数年前に一番ひどい状態だった頃にはそういう経験もしたけれど、現在のはまだまだ軽いもので「あ、depression(鬱)気味かもしれない」と自覚できる程度のもの。

どうしたって明日はやって来るわけで、このままどんどん悪い状態に落ち込んでしまう前に、何か小さな事でもいいから気持ちの方向を変えてみる。

これが数年間のプチ鬱生活で学んだ、私流のサバイバル術である。



何か自分が楽しみにできるもの。
と言うと、今のところお菓子やパンを焼くことなので、一晩発酵で手軽にできるパンを作ってみることにした。
時間はほぼ10時近いけれど、再びPCのスイッチをオンにして、お茶をすすりつつレシピ検索。
準備に手間がかかったり、捏ね時間が長いものを作るような元気も意欲もさらさらなかったので、ひとまず5分捏ねればいいものを選んだ。

オリジナルに少しアレンジを加えて強力粉とオーガニックのシリアル入りの小麦粉を半々。そこに塩・砂糖・ドライイーストそしてお水を加える。
洗い物を増やさない為にも、ボールの中で手で押しつけるようにして捏ねるだけ。

たとえ失敗しても、本来の目的が“どん底に落ちて行きそうな気持ちを上に向かせる”のだから、パンの出来不出来は今回は二の次。

これを大きめの蓋のピッチリ閉まるタッパーに入れ、冷蔵庫の野菜室で一晩発酵。



真夜中に近くになっても頭の中にいろんな考えが浮かんで眠れそうもないので、眠れない眠れないと悩むよりも本を読むことにする。


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最初に書いたようにこういう精神状態がしばらく続いていたので、この1カ月ほどは毎晩毎晩手当たり次第に昔買った本を再読したり、ながーい推理小説(スェーデンの人気TVシリーズの原作ヘニング・マンケル のヴァランダー警部シリーズ)を読んだりしていた。

この夜は、一体何時買ったのか思い出せないほど古い本を手にとってみた。
“漂泊の俳人”山頭火の作品集で『山頭火』(石寒太/著)。

山頭火に興味を持ったのは、NHKのある連続ドラマだったのだけど、昔から私の中にある“旅に生きる”ことへの憧れやその周囲にある風景のようなものを、山頭火の自由律俳句がぴったりと表現しているような気がして、一時はずいぶんはまった。

今回改めて読み返してみると、大好きだったけれど記憶から消えてしまっていた句も含めて、何度も読みながら深く深くため息をついてしまった。
で、山頭火にはまっていた頃の若い自分を思い返すと、なんだか今の自分の状況はそれほどひどいものじゃないように思えてきたりして....。


さて翌日。
前夜のパン生地を成型してからパールの散歩。
その間に室温で2次発酵する。
イギリスでは、医師や鬱に関するサポート団体なども『歩くこと』がdepression に効果があると薦めているので、この日は2時間くらい歩く。(補足:記事の最後にリンクをつけました。情報は英語のみですが、興味のある方は読んでみてください)
帰宅後、パンを焼き上げるとすでにお昼近い。
食後の感想は、思ったよりも美味しい!
オーブンの温度がちょっと低かったのか、表面のカリカリ感がやや少なめだけれど、みしっとした食感の生地は私好み。


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何よりも、自分が美味しく感じられるものを自分で作って作り立てを食べる、という小さな達成感みたいなものが、心への良い影響があると私は勝手に信じているのだけれど。

いつもは、昼食の後ものんびりせずすぐに家事に取り掛かるのだけど、この日は朝から『一日自分を大事にしてやる日』と決めていたので、図書館で借りた本を30分ほど読む。

デビュー作の『A short history of Tractor in Ukrainian~ウクライナ語で読むトラクターに関する短い歴史~』から大ファンのMarina Lewyckaの新作が入荷してあったので、早速借りてみたのだ。
今回もタイトル『We are all made of glue~私達は皆接着剤で出来ている~』だけで思わずニヤっとさせられるのだけど、彼女の持ち味であるユーモアのセンス&ストーリーの信ぴょう性&登場人物の魅力が最初の十数ページですでに満載。

しみじみさせつつも、読みながらふふふっと笑いがこぼれるような、「本を読むのって楽しいなあ」と感じられる本です。

ここ数年、イギリスで売れている小説、それも女性作家によって書かれた小説と言うと、何かと言うとセンセーショナリズムを意図したような内容・スタイルの物が多くて、正直飽き飽きしていた。
世の一般イギリス女性たち(その手の小説の読者層はたいてい中高年の女性達だから)は、よっぽど刺激に飢えているのだろうか?と考え込んでしまうほどだ。
私には、フィクションの中の悲劇とか残忍な暴力だとか、はたまた肉欲・貪欲にまみれきった世界を、わざわざ時間を費やして読む気になんてなれないけど。

小説自体めったに手にしないのだけど、あえて読むのなら日々の生活を少しでもより楽しいものにしてくれるような、「世の中って、人間って捨てたものじゃないのね」と思えるようなものを読みたい。
毎日楽しくランラン、と行けたらいいけれど、現実にはそうはいかないからこそ、あえて自分で選べるものは気持ちが明るくなるような読み物や物事を周りに置きたいと思う私なのだ。


depressionに悩む人をサポートするリンク:

心理学的視点からのアプローチ:NHS 『立ち直る力をつける10の方法』

同じ悩みを持つ人のそれぞれのサバイバル術:Depression Alliance『鬱と付き合うための補完療法』

つらい時には、私はボールに話しかけてます。

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Top▲ | by mini_robin | 2009-10-21 22:36 | 飼い主日記
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