さて、今回はフィンランドの湖水地方の話。
ヘルシンキから列車で2時間半北東に向かって走ると、ラパランタに着く。 特別な理由はなかったのだけど、ヘルシンキから乗り換えなしで2-3時間で行けて湖がある町、という条件を満足させるのがこの町だったので、数日滞在してみることにしたのだ。 ヘルシンキで数日過ごしてから天気予報をチェックして「うん、この辺りは好天が続きそう」と確認後、ヘルシンキのホテルからオンラインでホテルを予約して出かけた。そのくらい行き当たりばったりの旅だった。 車窓の風景 だからこそ、物事が予想外に展開しても、特に文句を言える筋合いではないのだけど....。 ほとんど予備知識が無かったとは言え、一応イギリスのガイドブックにも小さく掲載されていたし、ホテルだって数件あるくらいだから、それなりの“観光地”なのだろうなと予想していた。 ガイドブックによると、この町の観光名所は3か所。 町の中心に位置するサイマ湖。 サイマ湖畔にあるサンドキャッスル。 そして、サンドキャッスルを見下ろすようにそびえる要塞跡。 これだけ。 たしかに、湖はまるでイギリスから来ると海のように広大だし、しっかりとしたヨットハーバーがあってたくさんのボートが停泊していて、景色としては訪ねたものを納得させる何かがある。 でも、サンドキャッスルは「これ、わざわざ観光案内に載せるほどのものかい?」と言いたくなるような規模。 で、砂で出来たお城だけに、その一帯は完璧に“お子様ゾーン”となっている。 子供なしのビジターにとっては、悪いけど「だからどうだっつーの!」の一言に尽きるのだった。 遠くにそびえる“噂の“サンドキャッスル このサンドキャッスルの前には木造の小屋が数軒並んでいて、アイスクリームだのちょっとした土産物だのを売っている。 その一軒は観光案内所になっていたので、「お、ここなら何か滞在中のアイデアを提供してくれるはず」と入ってみた。 案内書に居たお姉さんは、フィンランドで出会った多くの人がそうであるように、自然な笑みを浮かべとても感じが良い。 「今日から数日ここに滞在するんですけど、何かお勧めの場所とか、アクティビティとかありますか?」と質問すると「ヘ?」という感じで、自然な笑みを浮かべたままやや固まってしまったお姉さん。 今までの私達の経験から言って、観光案内所でこの手の質問をすると十中八九「ようこそわが街へ。こういうのもありますぜ、ああいうのもありますぜ。これはどうですか?」という具合に、それほど自慢にならないような物でも「どうだぁ~!」という調子でアピールしてくるのが普通。 それだけに、ここでのあまりに素っ気ない反応には正直驚いてしまった。 期待した返事が返ってこないので、苦し紛れに普段はあまりこの手の質問をしない夫でさえ「え~っと、湖のクルーズはどういうのがあるんでしょうか...?」と聞くと、彼女は机の上の小さなリーフレットを見せながら一言。 「これです」 沈黙。 ガイドブックには、たしかこの湖だけに生息するアシカのコロニーが云々と書いてあったはず。 リーフレットにもそれらしき写真が載っているし、町のメインストリートにもアシカの像が置いてあったっけ。土産物屋にはアシカグッズもあったぞ。 私:「このアシカですか?その保護地域のような島を身に行くクルーズとかは無いんですか?」 お姉さん:「ありません」 沈黙。 こりゃダメだ。きっと本当になーんにも無い町なんだ。 エライ所に来ちゃったもんだなあ...。これから4日間、何して過ごせばいいんだ? 困惑したままそくさと案内書を後にし、とぼとぼとボードウォークを歩きながらホテルへ戻る私と夫。 町に着いたのが丁度お昼時だったので、まずは町を散策する前に手早くランチをと思い、これまたすごく愛想の良いホテルのレセプションのお姉さんがイチオシしていた“この地方の名物パイ(カレリアン・パスティ)”を食べてみることにする。 湖畔沿いに並ぶ売店で簡単に買えるから、という話だったので行ってみると.... 「え?英語のメニューはどこ?」 店の前に出された大きな看板のメニューが、どれもこれもフィンランド語オンリーなのだった。 4軒ほど並ぶ売店をひとつひとつチェックするも、どこもかしこもフィンランド語だらけ。 唯一理解できたのは『ピザ』と『コカコーラ』だった。 仕方なくあてずっぽで選んだ店で、他の人が食べている物を見て「きっとこれだな」と推測して、例のパイと言う物を頼んでみた。 周りはこのパイやドーナッツのような揚げパン風のものにハムか何かを挟んだような不思議なものを食べる家族連れで一杯。 なんとかゴミ箱の横のテーブルに座り、はやる心を抑えてパイにかぶりつく。 「......」 夫も私も無言。 食べ終わってから恐る恐る夫に、「どう?美味しかった?」と聞くと「ひどい味だ!なんだこれは!?」と完全に声が怒っている。 このパイ。 実は以前掲載したヘルシンキの屋内マーケットの写真に入っているのだけど、パイ生地にマッシュポテトを乗っけただけという素っ気ないもの。そして、夫が頼んだ“別バージョン”と言うのは、マッシュポテトの代わりに牛乳で煮たお米が入っている。 他国の土地の名物にケチつけるのは好まないけれど、これが美味しいわけがないのだ。 私の夫にとって、日々の飲食は人生の中の最重要事項の一番上の方にくる。 特に休暇中となると、毎日毎食彼は美味しいものを食べたがるのだ。 この彼の執着心に昔はずいぶん困惑させられたものだけれど、数年前から「きっと子供時代に毎日義母の作る不味い食事を食べさせられたので、その不足分を大人になった今取り戻そうとしているのね」と理解することにした。 そんな彼の“トラウマ”は理解はするけれど、知らない土地でのたった一度の不味い食事(それも小さなパイ程度)でいちいち機嫌をそこねられては、一緒に旅をする人間はたまったもんじゃないのだ。 基本的に旅は『自分の為ではない場所へ出かけていくこと』なんだから、面倒な思いをしたり、くたびれたり、失望したりするのが当たり前なのだ。 でも、歴史的なものか国民性か、『世界の何処に居ても我が家の快適さ』を旅に求めるイギリス人は、そんな“旅の不都合”をとても嫌悪する。 仕方なく夫の気持ちを切り替えさせようと、説得にかかる健気な妻。 「きっとこの町は、ボートで休暇する人と若い家族連れがのんびりと何もしないで過ごすための町なんだよ。だから、何かしなきゃ!と躍起になっても無駄なんだって。フィンランド人流に何もしないこと。天気が良いんだから日光浴してサウナに入って頭空っぽにすればいいじゃない。私はねえ、部屋のベランダで思う存分書き物するつもり」 マーケットの“賑わい” 実際に、この町での4日間の私達の行動は、1時間ほどのクルーズ(これはかなり退屈なルートだった)に参加したのと、半日自転車を借りてサイクリングをしたこと。 それ以外は、マーケット周辺にお昼を買いに行く道すがら、町のメインストリート(200メートルくらい)を往復した。 その通り沿いにある2軒のパブに日替わりで通った。 そして湖に停泊する船を使ったカフェで、夕日に染まっていく湖水を眺めつつ晩御飯を食べたりお酒を飲んだりして時間を過ごした。 メニューは3種類だけ。でも、どれも美味しかったボート・カフェ その程度である。 でもまあ、捨てる神あれば拾う神あり。 丁寧に歩き回っているうちに、なかなか興味深いものにもぶつかったりもした。 次回はそういう話です。 ♬そ~のうちなんとか、な~るだ~ろ~♬ Top▲ |
by mini_robin
| 2009-08-15 23:23
| 旅に出てみた
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