自家製苺ジャムの美味しさを再発見していた今日この頃。
また新たな味覚を発見した。 Quince (マルメロ)のマーマレード。 マルメロジャムと聞くと、60年代生まれの私は真っ先に『マルメロジャムをひとすくい』と言う田渕由美子作の漫画を思い出す。 (ちなみに、この作品は1975年りぼん3月号に掲載されていたそうな。まったく世の中にはあらゆる“専門家”が存在するのだ)。 この漫画、内容はちっとも覚えていないのに、なぜかタイトルだけはしっかりと記憶に残っている。他にも『フランス窓便り』なんて言うのも覚えている。タイトルだけ。 子ども時代の記憶って、不思議だなあ....。 で、ひとまずマルメロの話題。 イギリスではquinceと言えばjelly(ジュレ)が一般的。 フランス人をギョっとさせるような“味覚のハーモニー”を自慢するイギリス人だけれど、フルーツやハーブをベースにした甘いジュレやらソースやらを肉と合わせるのは、イギリス人ならではだと思う。 マルメロのジュレは、例えばラム肉や野鳥類のローストやハムと合わせたり、風味の強いチェダーチーズに添えたりするらしい。 わが夫はあまりこの“フルーツ&ミート”の組み合わせを好まず、大好物のカモ肉も例えばオレンジソース添えだけは苦手。 私は私で、例えば中華のメニューでイギリス人にダントツ人気の『スィート・サワー・ポーク(豚の甘酢炒め)』の甘ったる~い匂いを嗅いだだけで、胸がムカムカしてくる。 そんなわけで、エリザベス朝時代(14世紀中~15世紀中)までさかのぼるという伝統食のマルメロ・ジュレもジャムも、我が家の食卓には一度も登場する機会がなかったのだ。 ところが、うちの村のはずれにちょっとした工房的なお店が登場した。 そのお店こそ、マルメロ食品専門店なのだった。 お店、と呼ぶには正直気が引けるくらい普通の家(というか、倉庫改造)風のそれは、小さなキッチンと商品を陳列する小さなスペースがあるだけ。 この日お店にいたのは、“会社”のオーナー兼ジャム職人でもある女性と、お手伝いの男性が一人。ドアのすぐ後ろで今まさにマルメロを切ったり煮たりの最中で、室内には甘酸っぱい香りがたちこめている。 衛生用の頭巾をかぶり、エプロン姿の彼女はなんだか給食センターのおばさんみたいなのだけれど、いかにもこの仕事が大好きという口ぶりで、その日最初の客らしい私と夫を満面の笑顔で迎えてくれる。 こう見えても彼女は地域の“ビジネス・ウーマン・アワード”とか、食品展覧会の類で何度か受賞しているらしく、陳列棚の後ろの壁にはドレスアップした彼女が現ロンドン市長で前地元議員だったボリス・ジョソン氏や、TVシェフのレイモンド・ブラン氏と肩を並べて映っている写真やら、新聞の記事の切り抜きなどがぺたぺたと貼ってある。 夫はトースト自体日常的にあまり食べない人なので、ジャム・マーマレード類は一切私の好みで選んでいる。 で、この店のマルメロをベースにしたマーマレードは5~6種あるので、私の好み(甘過ぎず、ややシャープな味で、テキスチャーもジュレ風ではなくラフなもの)を伝え、オーナーさんにお勧め品を選んでもらったのがこの2品。 これが、マルメロ・レモン・ジンジャー・マーマレード。 こっちは、マルメロ・グレープフルーツ・レモン・マーマレード。 大事なお味の方ですが、普通のマーマレードの味を頭で想像して一口食べたると「え、なんだこれは?!」と驚く。 甘いというわけでも、酸っぱいというわけでもないし、いくつかの日本のサイトが表現しているように“苦みがある”と言うのでもなし。 不思議な風味、不思議な甘さ、としか表現のしようがないのです。 マルメロの独特の味わいに慣れてくると、マルメロ&グレープフルーツの方は“ちょっと一味違ったマーマレード”という風で、たぶんマーマレードファンなら『美味しい!』と感じるはず。私は結構気に入りました。 ただ、レモン・ジンジャーはちょっと独特。 英語でtangy(ピリっとする)と表現したくなるような、酸っぱさとほろ苦さ、そしてジンジャーのシャープな風味が口の中に広がって、どちらかと言うとこれはチーズ(クリームチーズなんかいいかもしれない)などを添えたほうが、味のバランス的にはいいかもしれない。 イギリスはとにかくジャムだのチャツネだのとpreserve(果物や野菜類をベースにした貯蔵食品)の類がやたら数多くある。 つい最近も、夫がクリスマスに親戚からもらった“桃のチャツネ”の美味しさに感心&驚嘆したばかり。 在英10数年。まだまだイギリスには、未知の味覚の世界が存在しているのだった。 Top▲ |
by mini_robin
| 2009-05-19 18:25
| キッチン
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by Animal Skin |
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