バースの旅その2は、キャッスル・クームという村へ立ち寄った話。
この手の観光地に関してはまったく無知な夫は、「聞いたこともなかった」そうなのだけど、村上春樹氏の名著『遠い太鼓』にも登場する大層有名なこの村。 この旅行記の中では、村上氏はたしか知人から「キャッスルクームは美しい村だから」と聞いて、バースで自転車を借りてキャッスルクームまでサイクリングする、というエピソードだったと思う。 実際に車で行ってみると「やっぱりフルマラソンをする人は体力あるなあ」と感心するくらい、素人さんが気軽にサイクリングしようと思うような道のり&距離ではないのだけど。 ひとまず、期待に胸を膨らませて村へ続く一車線の道を走って行くと… 「なにこれ?」 どう見積もっても200メートルはあるかどうか程度の一本道の両脇に、伝統的な石造りの家々が並んでいる。 それだけ。 せっかく来たんだからと、カメラ片手に村の端から端まで歩いてみる。 村の端には美しい小川が流れているのだけど、その向かいに建っている家は所謂“mock”と呼ばれるタイプで『表面上は伝統的風に作ってあるけれど、実は現代的な家』だった。で、その手の家屋が建っている地域は“デペロップメント”と呼ばれ、それは“我が家はお城である”とするイギリス人が、どちらかと言うとネガティブな意味を込めて使う不動産関連用語なのだ。 これですでにちょっと興ざめ。 更に村の真ん中辺りでは、ある家の前に手作りケーキを並べ、小さな一切れが£1.50という大胆な高値をつけて売っている住人がいたりするのも、なんとなく嫌な感じ。 写真を取るにしても、なにしろ短い通りだからそれほど興味深い被写体がたくさんあるわけでもなし。 村唯一のビジター向け宿泊施設と思われる宿屋兼パブの前で私を待っていた夫が、「こんなどってことない村に、どうしてこんなに観光客が来てるのかなあ」と呆れたように言う。 結局10分ほどの滞在で村のはずれに停めた車に戻った。坂になっているその道路の向こうから、ぞくぞくと観光客が歩いてくるのが目に入った。狭い田舎道なのでUターンをするために坂を少し上って行くと、道路沿いにぎっしりと車が縦列駐車している。そして更に進むと、住宅の途切れた辺りに駐車場のマークが。 どうやら、そこに観光バスやらなんやらが駐車して(一車線道路は、大型バスは進入禁止なので)そこから人々は“あの”小さな村目指してトコトコと歩いて来ると言う訳なのだ。 「夏の観光シーズンは、さぞかし大混乱だろうなあ。この通りは」 夫は更に呆れてため息をつく。 私もまったく同感です。 ゴールデンウィークも近いことだし、もしもバース方面への旅を予定されている方がいたら僭越ながら“おばさん”の視点でひとつご忠告。 「あの程度の古い町並みならコッツウォルド辺りにだってあるんだから、なにもわざわざ苦労してキャッスルクームまで出かけて行く価値ないってば」 緑の丘陵がどこまでも広がるバース周辺のカントリーサイドの景観は、文句なく美しかった。 「あ~、ここをウォーキングをしたらさぞかし楽しかろうなあ」としみじみ思うのだけど、いかせん膝の故障が悪化しているこの頃なので、その楽しみも実現不可能。 そんなわけで、今回のバースへの旅は市内で1時間ほどの買い物を満喫し(オックスフォードなんて比較にならないくらい、バースは気の利いたお店が一杯!)、久しぶりに素晴らしく快適なB&Bに泊まり、旅は幕を閉じるのだった。 Top▲ |
by mini_robin
| 2009-04-09 22:33
| 飼い主日記
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